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  • 試験における重症型薬疹とSSSSの鑑別点について

    posted at 2019年2月21日

    SJS(Stevens-Johnson症候群)、TEN(中毒性表皮壊死症)、SSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)は、CBTや医師国家試験で頻繁に問われる疾患である。

     

    自分は重症型薬疹(SJS, TEN)とSSSSの鑑別に不自由していなかったが、友人に問われたため記事に起こした。

     

    そもそもTENの診断基準にはSSSSのルールアウトが明記されているので、実臨床上も注意深い鑑別が必要と推察される。

     

    確かに重症型薬疹とSSSSは

    • 発熱
    • 広範囲の表皮剥離

    といった点で共通点が多い。

     

    またTEN、SSSSはどちらもNikolsky現象が陽性なので、より紛らわしいかもしれない。

     

    ただ実際のところ、試験においてこれらの鑑別は簡単である。

     

    なぜならば重症型薬疹では服薬エピソードが問題文にあるはずだからである。

     

    また今のところ私は、SSSSの問題で服薬エピソードのあるものを確認していない。

     

    しかし質問してきた友人は「それだけで判断するのは危ない気がする」と言っていた。

     

    それも一理あって、もしかしたら「SSSSだけど別疾患による治療で患児が薬剤を服用している」のような引っ掛け問題もあり得るし、「薬剤が原因でないSJS/TEN」が出題される可能性もある。

     

    すると服薬エピソード以外の鑑別点を知っておくことは、より安全な受験につながるだろう。

     

    ではまず疾患の特徴を個別にみていく。

     

     

    SJS

    多形紅斑が進展したものである。

     

    症状:

    粘膜や眼に病変をきたし、発熱・関節痛などの全身症状を伴う。

     

    病因:

    原因は薬剤・マイコプラズマ感染・ウイルス感染などであるが、突き止められない場合もある。

     

    診断:

    全身の紅斑に加え、粘膜病変、びらん・水疱、発熱があり、病理学的に表皮の壊死性変化があれば診断可能である。

     

    治療:

    ステロイドパルス、原因薬剤の中止、点眼ステロイド、涙液補充

     

     

    TEN

    多くはSJSから進展したものである。

     

    症状:

    高熱や全身倦怠感などの全身症状を伴って、粘膜病変および全身性の紅斑、びらんを生じる重篤な疾患である。Nikolsky現象陽性。

     

    病因:

    薬剤性が多い

     

    診断:

    SSSS、トキシックショック症候群、伝染性膿痂疹、急性汎発性発疹性膿疱症、自己免疫性水疱症を除外した上で、全身性の紅斑、体表面積の10%を超える水疱・びらん、発熱を認めれば診断できる。

     

    治療:

     

    高用量ステロイド内服、ステロイドパルス、原因薬物の中止、血漿交換、免疫グロブリン大量静注療法

     

     

    SSSS

    6歳までの乳幼児に好発する疾患である。成人で発症することもある。

     

    症状:

    発熱等の全身症状を伴い、全身に発赤・水疱・表皮剥離を生じる。目・鼻・口周囲・外陰部にも表皮剥離や痂皮をきたし、口囲の放射状亀裂は特徴的である。Nikolsky現象陽性。

     

    病因:

    ブドウ球菌が放出する表皮剥奪毒素が皮膚のデスモグレイン1を傷害することから皮膚病変を生じる。

     

    診断:

    特徴的な顔面症状、びらん、Nikolsky現象を認め、口腔粘膜に病変がないことなどから診断。

     

    治療:

    抗菌薬点滴静注、抗菌薬含有軟膏、保湿

     

     

    重症型薬疹とSSSSの鑑別

    以上から考えると、両者の明らかな鑑別点は「粘膜病変の有無」と言える。

     

    理由は以下の二点に要約可能だ。

     

    • SJS/TENでは粘膜病変が診断基準に含まれている(※)
    • SSSSでは病態生理から考えてまず粘膜病変をきたさない

    ※SJSでは主要所見、TENでは副所見である。ただしTENにおいても、粘膜病変が必発することが想像される。

     

    1点目に関しては、診断基準である以上絶対である。

     

    2点目に関して解説を加える。

     

    SSSSは黄色ブドウ球菌が放出する表皮剥奪毒素がデスモグレイン1を傷害する。

     

    デスモグレイン1の障害といえば、もう一つ落葉状天疱瘡が挙げられる(こちらは自己抗体による障害)。

     

    ではなぜSSSSと落葉状天疱瘡は粘膜病変をきたさないのか。

     

    まず以下に図を示す。

     

    清水宏『あたらしい皮膚科学』第3版 p.251、中山書店、2018年、より引用

     

    図に示したように、粘膜ではデスモグレイン3が十分に発現している。

     

    したがってデスモグレイン1が障害されても、粘膜へ病変をきたすことは考えにくいのである。

     

    結論

    試験における重症型薬疹とSSSSの鑑別は、まず「粘膜病変の有無」を考慮する。

     

    すなわち、

    • 粘膜病変あり→重症型薬疹
    • 粘膜病変なし→SSSS

    ということである。

     

    その上で、

    • SJS/TENは薬剤性が多い
    • SSSSは6歳までの乳幼児に好発する
    • SSSSでは特徴的な顔皮膚病変を示す

    などの情報を補助的に考慮すれば、極めて安全に解答できると思われる。

     

    ここまでくればもはや試験的にはオーバーキルな知識と言っても良さそうだ。

     

    以上。