せっかくシンガポールに旅行するなら、その歴史・社会・政治・文化を知っておいたほうが圧倒的に楽しいです。
知っている人だけが感じられるシンガポールの雰囲気、というのが必ずあります。
旅行の中のあらゆる場面の何気ないところにこそ、その国の特徴はにじみ出るものです。
それを感じぬままに帰国するなんてもったいない!
『物語 シンガポールの歴史』
シンガポール旅行の前に読む本としては、『物語 シンガポールの歴史』の1冊だけで十分だと思います。
歴史の物語といっても、『竜馬がゆく』のように特定の主人公が設定されているわけではありません。
あくまでも歴史の流れを客観的に語っていて、どちらかというと読みやすい教科書という感じです。
ページ数も250ほどで、読むのが速い人なら、行きの飛行機で読み終わってしまうと思います。
遅い人でも5日くらいでしょうか。
内容
本書は以下のような構成になっています。
- はじめに
- 序章 シンガポールの曙 —— 19世紀初頭
- 第1章 イギリス植民地時代 —— 1819~1941年
- 第2章 日本による占領時代 —— 1942~1945年
- 第3章 自立国家の模索 —— 1945~1965年
- 第4章 リー・クアンユー時代 —— 1965~1990年
- 第5章 ゴー・チョクトン時代 —— 1991~2004年
- 第6章 リー・シェンロン時代 —— 2004年~
- 終章 シンガポールとは何か
- あとがき
以下は本書の中で僕が面白いと感じた点を2つ紹介します。
日本もシンガポールを植民地にしていた期間があった
実は日本もシンガポールを植民地にしていた期間があったそうです。
お恥ずかしながら初めて知りました。
それは1942年2月から1945年8月(日本が敗戦した時)の期間で、この期間をシンガポールではそのまま「3年8ヶ月」と呼んでいるそうです。
この「3年8ヶ月」はシンガポールにとって屈辱的な期間でした。
敗戦した日本が撤退し、イギリスが戻ってきたとき、多くの住民はイギリス国旗を振って歓迎したといいます。
なぜ日本の植民地支配が屈辱で、イギリスの植民地支配は歓迎されたのか。
様々な理由があるのですが、特に重要なのは、占領した日本軍がシンガポールの華僑住民を虐殺したことです。
現在では虐殺事件の記憶が、「日本占領時期死難人民記念碑」という4本の白い塔に刻まれています。
この4本の塔はそれぞれ華人、マレー人、インド人、ユーラシア人を表しており、それぞれがシンガポールの主要民族の象徴なんですね。
もしここに訪れる予定があるならば、「3年8ヶ月」の期間に関することや、塔が建造された経緯などを本書で勉強してみると良いでしょう。
シンガポールの政治は特殊
実はシンガポールの政治は形式上は民主的ですが、実際は一党独占状態が続いています。
ずっと民主的国家だと思ってきただけに、びっくりしました。
なぜ一党独占状態が続いているかというと、徹底的に野党勢力を弾圧してきたから。
シンガポールは国の最高目標が「経済発展」なので、民主的な政治は重要視されていなかったのです。
それにしても国の最高目標が「経済発展」とは極端なものです。まるで企業のよう。
でも国を存続させるためには、そうするしかなかったんです。
なぜ「経済発展」という最終目標と「事実上の一党独占状態」が容認されたのか。
これがシンガポールを理解する上で最も重要な点です。
そしてこれが本書の主な主題だと思います。
詳しくは本を読んでのお楽しみ。第4章から第6章にかけて詳しく書かれています。
シンガポール旅行を豊かに過ごすために
実際にシンガポールを旅行してみると、歴史的なバックグランドを感じさせる風景を捉えることができるでしょう。
林立する高層ビル群が「経済発展」を国是としてきた結果だと知れば、見え方も変わってきます。
地域によって街の雰囲気が、ここは同じ国なのだろうか? と疑問を持つほど全く違うことは、イギリスの植民地支配を詳しく知ると面白いほどに理解できます。
ぜひシンガポール旅行の前に『物語 シンガポールの歴史』を読んでみて下さい。
コメント