私は現在医学生として病棟実習をしている。
病棟実習では実際にそこで働いている医師から、
- カルテの書き方
- 問診の方法
- 診察の方法
- 症例発表の内容
- プレゼンの仕方
などの指導を受けるのだが、これらの医師らが教育を専門としているとは限らない。すると相手によっては以下のような問題が起こりうる。
例えば症例発表の内容指導を受けているとする。
学生「明日の症例発表で提示する資料についてなのですが、、、」
指導者「うーーん、全体的に、なんというかねぇ、こう、例えばこの検査値とか大事だからもっと強調した方がいいし、それとねえ、例えばこの薬ってどんな作用があったっけ?」
学生「あ、あ、すみません、調べてきます」
指導者「うん、薬を調べるのは研修医になってからも大事になってくるからね、で、その資料のことなんだけど、現病歴がちょっと分かりにくいなあ、、いつ診断されてどんな治療を今まで行ってきたのかが、これだとよくわかんないんだよね…」
学生「あ、あ、書き直しておきます」
指導者「さらにね、うーんとね、この患者さんは合併症も多いからね、ということはこの書き方ではそのアセスメントというか、考察がすこし、、、」
。。。
。。。
以上が「言っていることが曖昧でよく分からない」典型例である。
このような指導を受けると、イライラするだけではなく、
- 結局どうすれば良いか分からないため、問題の修正に時間がかかる
- 相手の意図を正確に汲み取れていない可能性が高く、再提出が連続する可能性がある
という危険性があり、デートや飲み会に遅刻するという深刻な被害を招きかねない。
今回、こういった例に対して有効な対策があったので紹介したい。
結論を簡単に言うと、「ひたすら具体的な行動に落とし込んだやり取りを心がける」というものである。
この作戦を用いることによって、
- 自分が改善すべき点を最速で理解できる
- 指導者自体の要点整理が早く進むので、結果的に早く帰れる
という利点がある。
目次
要領を得ない指導者は混乱しているだけである
指導者が要領を得ない説明をしてしまう原因には、以下の3つのが考えられる。
- 効果的な指導の方法が分からない
- 指導者自体が「被指導者が改善すべきことの本質」を理解していない
- 指導者の性格が悪い
私の経験上、この中で「指導者の性格が悪い」可能性は低い印象である。
指導者は基本的に仕事が忙しいため、どこの馬の骨とも分からない学生の指導などさっさと終わらせたい。学生の指導をわざと冗長にして拘束してやろう、なんてことを考える可能性は低い。
すると指導者が要領を得ない説明をする原因は主に
- 効果的な指導の方法が分からない
- 指導者自体が「被指導者が改善すべきことの本質」を理解していない
の2つだと考えられる。
ざっくりいえば、「指導者自体が良く分かっておらず、混乱しているから」と言える。
そうだとすれば、こちらから助け舟を出せば解決するはずだ。
問題を整理する鍵は行動である
混乱している指導者に助け舟を出すには、こちら側が自らの問題をある程度整理しなければならない。
では何を軸にして問題を整理するのが良いだろうか?
私の意見としては、「行動」を軸にするのが良いと考える。何故ならば現状は行動しないと変化しないからである。
意識を変えても仕方がない。
「意識改革! 院内感染に注意しましょう!」とぶちあげたところで、何も変わるとは思えない。
「院内感染を防ぐために、病室の入退室時に毎回手指消毒をしましょう!」などと具体的な行動にアプローチするべきなのである。
これと同じで私たち学生が抱えている問題は、ほとんど誤った行動にある。
問診で名前を名乗っていない。意味を考えずに診察をしている。自分の言葉でカルテを書いていない。症例発表において合併症を考慮したアセスメントをしていない。パワーポイントの文字が小さい。etc……
つまり私たちが明らかにするべきなのは、
- 現状で自分が行っている誤った行動は何か
- その行動を改善する方法を自分は知っているのか
である。
指導者がだらだらと話している間に、上記の2つを意識しながら、その場で整理するのが大切だ。
整理した結果を適切に伝え、指導者の混乱を解消する
こちら側の整理が着いたら、その結果を指導者に伝える必要があるが、これが結構難しい。
間違っても指導者の発言を遮って、
「要するに私がするべきことは、
- 〇〇する
- △△する
ということですよね。」
などと言ってはいけない。
というのも、実際に私が上のように発言したところ、指導者の顔がムッとした経験があるからだ。
同じ内容でも、言い方を変えるだけで問題は起こらなくなる。
さて肝心の言い方であるが、こちら側の状況によって2種類の方法に分かれる。
自分がどのように行動を変えれば良いか理解している
この場合は、以下のような言い方が適切と考えられる。
「現状では私には〇〇していた、という問題がありました。これを◎◎のようにしていきたいと思います」
まず自分の〇〇という行動に問題があった、と指導者を立てながら論点を「行動」に落とし込む。次に自分が理解した行動目標◎◎を提示することで指導者をすっきりさせ、会話を終わらせる。
というメカニズムである。
自分がどのように行動を変えれば良いか分からない
この場合は、以下のようである。
「現状では私には〇〇したいた、という問題がありました。しかしこれを具体的にどのように変えれば良いか分からず困っています」
やはりまずは指導者を立てつつ論点を「行動」に誘導し、さらに「行動」を主眼とした答えを強く期待する質問の仕方をするのである。
冒頭の具体例でシミュレーション(改善案)
症例発表の内容指導の改善案である。
学生「明日の症例発表で提示する資料についてなのですが、、、」
指導者「うーーん、全体的に、なんというかねぇ、こう、例えばこの検査値とか大事だからもっと強調した方がいいし、それとねえ、例えばこの薬ってどんな作用があったっけ?」
学生「すみません、私の勉強不足で存じ上げないので、教科書で調べて参ります。検査値に関してはあまり深く考えていませんでした。この疾患で重要な検査値が分からないのですが、具体的にどの値に注目して修正するべきでしょうか」
指導者「はい調べるように。で、あー、この方は感染があるから、CRPとか赤沈を見なきゃね。えーと、まあ値だけ見ても仕方ないけどね…」
学生「値だけでなく変化に注目するとかですか?」
指導者「まあそういうことになるね。それとね、あとは現病歴がちょっと分かりにくいなあ、、いつ診断されてどんな治療を今まで行ってきたのかが、これだとよくわかんないんだよね…」
学生「現病歴が少し分かりにくいのですね。確かに診断の時期やこれまでの治療をしっかりと考えていませんでした。カルテを遡って、診断の時期やこれまでの治療を記載します。それ以外に私の書いた現病歴でどこか修正するべき箇所はありますか?」
指導者「云々…」
といった具合である。自分の行動目標が分からなければ、絶対にそのままにしない姿勢である。
こうすれば、やり取りにおける言葉数が増えたとしても、結果的に一発で指導者が満足させる修正ができるので、早く帰れるようになるのだ。
当然自分の改善すべき点が解像度よく理解できるため、相当な能力アップも期待される。
終わりに
今回の記事をまとめると
- 要領を得ない指導者は混乱している
- 「行動」を主眼にして問題を整理し、指導者の混乱を解消する
- 指導者をうまく立てながら、議論の対象を「行動」に限定し、本質的な解決を試みる
- 具体的な行動目標が理解できるまで踏み込む
である。
指導者も人間なので、一概に全ての指導者に対して効果があるとは言い切れないが、一つの有力な手法になり得ると考える。
このライフハックを使って、QOLの高いプライベートを送っていただけたら嬉しい。
コメント